「音」は、眠りのもうひとつの空調 ​~夏の夜を快適にする“聴覚環境”の整え方​~

音と睡眠

「音」は、眠りのもうひとつの空調 夏の夜を快適にする“聴覚環境”の整え方

日本の夏は、ただ暑いだけではありません。
高温に加えて湿度も高く、私たちの身体と心に重くのしかかってきます。
このような環境では、深い眠りに入ることが難しくなりがちです。
エアコンや除湿器などで温湿度を調整することは、今や快眠の常識ともいえる対策ですが、それだけで本当に眠りの環境は整うのでしょうか。
私たちは、空気の温度や水分量ばかりに意識を向けがちですが、「空気の振動」という視点で空間を見つめ直すと、もうひとつの重要な要素が見えてきます。
そう、それは「音」です。
音とは、空気の波、つまり空気の微細な振動です。
人間の耳には聞こえない微細な揺らぎでさえ、私たちの神経系には影響を及ぼします。
夜、どこからか聞こえるエアコンの唸り、外を走る車の音、遠くで鳴く虫の声。
無意識に受け取っているこれらの音が、眠りに作用していることに、どれほどの人が気づいているでしょうか。
特に日本の夏の夜は、窓を開けて風を通す場面も多く、外音が寝室に入りやすくなります。
エアコンの冷気とともに夜入り込むこの「音の空気」が、不快な振動であれば、それは立派な“睡眠の妨げ”になります。
逆に、心地よい響きをもつ音が空間に満ちていれば、それは眠りへと導く“もうひとつの空調”となるのです。
音による空間環境の調整は、「聴こえる/聴こえない」の範囲にとどまりません。
音には波長があり、空間に「在る」だけで、人の自律神経や呼吸、心拍、筋肉の緊張状態にまで影響を与えることが近年の研究で明らかになってきました。
たとえば、自然音――川のせせらぎ、森のざわめき、遠くで鳴る雷――には、聴覚に心地よいリズムと周波数が含まれており、人間の副交感神経を優位にする作用があります。
つまり、「聴くことを意識しなくても、そこに在るだけで整えてくれる音環境」が、眠りに大きく関わってくるのです。
そのような観点から、私たちは「音を空調の一部」として捉えることを提案しています。
温度や湿度を整えるように、音もまた“空気の質”を左右する重要な要素だからです。
とくに夏の夜、機械音や外音のストレスから耳を守り、心身をゆるめる“波のような音の揺らぎ”を空間に満たすことは、深い眠りへの近道になるでしょう。
音が持つ力は、ただのBGMやリラクゼーション音源にとどまりません。
空間の空気そのものに“質感”を与え、体感温度さえ変化させるような作用をもつ音もあります。
それはまさに、“聴覚の空調”ともいえる存在。
エアコンの設定温度を1℃変える前に、あなたの「音環境」を見直してみませんか?

この記事を書いたひと

有限会社エムズシステム 代表取締役 三浦 光仁

「音と睡眠」に関する第一人者。
音の不思議さ、音楽の凄さに身も心もやられ、人生の半生を捧げる。
あるエネルギーの振動(周波数帯域)により、人体が受け止める感覚センサーが異なると知り、驚愕。波長、周波数、共鳴、共振、という科学に足を踏み入れ、量子論的な世界を毎日楽しく生きる、有限会社エムズシステムの代表取締役、三浦光仁(みうらてるひと)。