自律神経は、環境を常に監視している
人間の身体には、自律神経と呼ばれる調整機能があります。
交感神経(活動・緊張)と副交感神経(休息・回復)が状況に応じて切り替わり、心拍、呼吸、血圧、消化などを制御しています。
この自律神経は、意識よりも早く、環境の変化を察知します。
音もその重要な情報源のひとつです。
音は「危険検知」の信号でもある
音が発生すると、脳は瞬時に音源の方向や距離を推定します。
これは原始的な防御機能であり、危険の有無を判断するための仕組みです。
現代の都市空間には、
- エアコンや換気装置の持続音
- 電子機器の動作音
- 交通や外部環境からの間接音
が存在します。
これらは音量としては小さくても、発生源が明確で、一定方向から持続的に届くという特徴があります。
その結果、脳は「完全に安全」と判断しにくい状態が続きます。
微細な緊張の持続
大きな騒音がなくても、方向性を持つ音が持続すると、
交感神経の活動がわずかに高い状態が保たれることがあります。
この状態は劇的なストレス反応ではありません。
しかし、
- 呼吸が浅くなる
- 筋緊張が抜けにくい
- 入眠に時間がかかる
- 深い睡眠が短くなる
といった変化につながる可能性があります。
「静かなのに落ち着かない」という感覚は、こうした微細な緊張の積み重ねとして説明できる場合があります。
自然環境との比較
森林や海辺の環境音には、特定方向から強く主張する音が少なく、空間全体に広がる性質があります。
このような音環境では、脳が音源を特定し続ける必要が減り、副交感神経が優位になりやすいと考えられています。
重要なのは、
音があるかないかではなく、
音がどのように存在しているか
という点です。
音環境という視点
音と睡眠研究所では、音量や音質だけでなく、
- 音の方向性
- 空間内での分布
- 持続パターン
を含めた全体像を「音環境」として捉えています。
睡眠は、身体が安全だと判断したときにはじめて深まります。
音環境は、その安全判断に影響を与える要素のひとつです。
異常の定義
ここでいう「異常」とは、騒音レベルの問題ではありません。
身体が本来想定している環境と、現代の音環境との間に微細なズレがある可能性を指しています。
このズレが長期間続くと、慢性的な疲労感や回復しにくさとして現れることがあります。
見直すことは可能か
音環境は、不可避なものではありません。
空間設計の工夫や音の広がり方の調整によって、身体が緊張しにくい環境へと近づけることは可能です。
音を消すのではなく、音の在り方を整える。
それが、睡眠と回復を支えるもうひとつのアプローチです。
