触れる音、包まれる眠り

音と睡眠

触れる音

夜、静かな部屋で音楽を聴いていると、耳だけでなく体全体がふわっとゆるんでいくような感覚になることがあります。
これは、音が単なる聴覚的刺激にとどまらず、皮膚を通じて私たちの神経系に深く作用しているからかもしれません。

皮膚は、「巨大な感覚センサー」としての役割を持ち、触覚・圧覚・温覚・痛覚など、あらゆる情報を脳に伝えています。
そしてその中でも、特に振動や圧力に対する感受性は、音のような空気振動をも感知するのに適しています。

感じる音

事実、低周波の音や空間全体に響くような波動音を浴びたとき、私たちはそれを「聴く」だけでなく「感じる」ことができます。
それは皮膚や筋肉を通して、音が身体に届いている証拠です。

この皮膚への音刺激が、私たちの自律神経、特に”副交感神経”の働きに深く関与していることがわかってきています。

副交感神経は、心身をリラックスさせ、回復モードへ導く神経系です。
ゆったりとした音、柔らかく包まれるような音は、皮膚に穏やかな刺激を与え、副交感神経を優位にすると考えられています。
つまり、皮膚から受ける音の”やさしさ”が、そのまま自律神経のバランスに影響を与え、心拍や呼吸、そして眠りの深さにまで関わってくるのです。

包まれる音

最近の研究では、触覚的刺激を伴う音環境が、不安感や緊張を緩和する効果を持つことも示唆されています。
音が皮膚に“触れる”ことで、まるで誰かにそっと背中をなでられているような安心感が生まれ、その安心感が睡眠の質に大きな影響を与えるのです。

だからこそ、音と睡眠を考えるときには、「どんな音が聴こえるか」だけでなく、「どんな音が身体に触れているか」を見直すことが重要です。

柔らかく包み込むような音──たとえば自然音、波動性のある倍音、心地よい残響。

そういった音を浴びる空間に身を置くことで、耳からも皮膚からも、眠りの準備が整えられていくのです。

音は耳で聴くだけのものではありません。感じる音、触れる音があります。

そしてそれは、深い眠りへと導く、やさしい手のようなものかもしれません。

この記事を書いたひと

有限会社エムズシステム 代表取締役 三浦 光仁

「音と睡眠」に関する第一人者。
音の不思議さ、音楽の凄さに身も心もやられ、人生の半生を捧げる。
あるエネルギーの振動(周波数帯域)により、人体が受け止める感覚センサーが異なると知り、驚愕。波長、周波数、共鳴、共振、という科学に足を踏み入れ、量子論的な世界を毎日楽しく生きる、有限会社エムズシステムの代表取締役、三浦光仁(みうらてるひと)。