「騒音」ではなく「包まれる音」ー都市生活と音による疲労ー

音と睡眠

ノイズマスキングを超えて、空気のように存在する音とは

都市で暮らす私たちの日常には、常に「音」があります。
交通の雑踏、エアコンのモーター音、近隣の生活音…
それらはしばしば、「気づかないうちに疲労の源になっている音」かもしれません。
耳は休むことなく、外界の音をキャッチし続けています。
とりわけ都市環境では、そこに確かな休息をもたらす静寂が、そもそも少ないのが現実です。
ノイズが知らず知らずのうちに交感神経を活性化し、ストレスを生み出し、気づかないうちに「耳と心の疲労」を蓄積させます。
これは「音疲労」とも呼ぶべき、現代の見過ごしやすい問題です。

ノイズマスキングは「音の静けさ」ではない

対策として、背景音で不快な音を「打ち消す」ノイズマスキングがよく用いられます。
たとえば、雨音やホワイトノイズで交通音を隠すといった方法です。
しかし、「騒音を隠す=静かな音環境」を作っているわけではありません。
マスキング音も音であり、それ自体が聴覚を刺激している点では変わりません。
本当に“心地よい音の空間”とは、余計な刺激のない“自然な包まれ感”をもたらす音なのです。

都市生活に求められる、「包まれる音」

では、耳に“やさしい音”とはどんな音でしょう?
それは、「存在を主張せず、身体に自然に馴染む音」です。
具体例を挙げるとすれば…

樹木の葉ずれ音
波の連なりの音
蟲(むし)の声が遠くから聞こえる音

こうした“自然なゆらぎ”には、方向性がなく、
耳への圧力を感じさせず、むしろ身体の奥まで安らぎを届けてくれます。
まるで空気を整えるように作用するため、「音のエアコン」とも呼べる存在です。

「包まれる音」の効果とは?

副交感神経を優位にし、心身の緊張をほどく、静かな呼吸にもつながり、
眠りや集中を促す手助けをします。
音の境界が曖昧になり、安心感が生まれる「ここだけ聞いて」ではなく、
「全体にある心地よさ」です。
聞き疲れが少なく、長時間いても疲れない、明らかな音情報ではなく、
五感にやわらかく溶け込む音は、疲労を軽減します。

「包まれる音」を都市に届ける意義

都市でこそ、多くの人々が「音疲れ」にさらされがちです。
だからこそ、都市生活の中に「自然と調和した音環境」を取り込むことで
大きな癒しが生まれる可能性があります。
ホテル、クリニック、住宅のリビング…ほとんどの空間は、
「視覚的には美しいが、聴覚的には疲れる」場所が多く、音環境の改善は
意外に見逃されている要素です。
「包まれる音」は、ただの音ではありません。それは空間を調える、身体を休める、
私たちの感性をそっと整える“空気”です。

都市の「静けさ」には、単なる無音ではなく、聞きたい音でもない、
でもそこに在る“自然な音”の存在が必要です。「騒音」ではなく、「包まれる音」が、
あなたの心と身体を、静かに笑顔へと導いてくれますように。

この記事を書いたひと

有限会社エムズシステム 代表取締役 三浦 光仁

「音と睡眠」に関する第一人者。
音の不思議さ、音楽の凄さに身も心もやられ、人生の半生を捧げる。
あるエネルギーの振動(周波数帯域)により、人体が受け止める感覚センサーが異なると知り、驚愕。波長、周波数、共鳴、共振、という科学に足を踏み入れ、量子論的な世界を毎日楽しく生きる、有限会社エムズシステムの代表取締役、三浦光仁(みうらてるひと)。