「世界の調律」を読んで

音と睡眠

人間と自然音の調和

R・マリー・シェーファーはその著書『世界の調律』の中で、人間と音の関係性を深く掘り下げています。
その中で彼は、私たちが長い歴史の中で「自然音」に適応してきた進化的背景について触れ、人工音が現代人に与える影響について警鐘を鳴らしています。
私たち人間は、数十万年という長い歴史の中で、常に自然の音とともに生活してきました。
風が草木を揺らす音、雨が大地を叩く音、鳥のさえずり、川のせせらぎ。
これらの音は、私たちの心と体に調和をもたらすものであり、特に睡眠において重要な役割を果たしています。
「音と睡眠研究所」の最終目標は音の及ぼす効果や影響が、睡眠に限らず、ヒトにとってどれだけ大きく、また重要なものかということを明らかにし、どのような音が望まれているかを提示することなので、シェーファーのこの著作は大いなる指標になると思います。

睡眠の重要性

たとえば、エアコンや冷蔵庫の室外機、車の交通音、都市部の低周波ノイズなど、現代の生活環境には人工的な直進音が溢れています。
これらの音は、私たちの神経を無意識のうちに刺激し、交感神経を優位に保ち続けるため、ストレスの原因となり得ます。
日中であれば、多少の音による刺激も活動を促進する要素になることがありますが、問題は睡眠中です。
シェーファーは、睡眠が人間の心身を回復させるために最も重要な時間であることを強調しています。
その時間においても人工音にさらされ続けることで、脳は完全にリラックスすることができず、睡眠の質が低下するリスクがあると述べています。

自然な音の効果

一方で、自然音はまったく異なる効果を持っています。
風のそよぐ音や雨の音、遠くで聞こえる虫の声など、自然の音は私たちにリラクゼーションをもたらし、副交感神経を優位にする作用があります。
このことは、私たちが長い進化の過程で自然環境に適応してきたためであり、これらの音が私たちの脳や神経にとって馴染み深く、安心感を与えるものだからです。
現代社会において、静寂や自然音に触れる機会は減少しつつあります。
しかし、人工音にさらされ続けることで私たちの心と体が知らず知らずのうちに負担を感じていることを意識することが重要です。

心と体の調和を取り戻す

シェーファーは、「音のダイエット」を提案し、睡眠環境を自然音に近づける努力を勧めています。
たとえば、睡眠時には静かな空間を作り、自然音を再現したサウンドを取り入れることで、心地よい眠りを手に
入れることができるでしょう。
自然音に囲まれた生活は、私たちの祖先が長い年月をかけて築き上げた「心と体の調和」を取り戻す第一歩です。
人工音が溢れる現代にあっても、少し意識を変えるだけで、睡眠の質や日常のストレスが大きく改善されるかもしれません。私たちが望む音とは何かを考え、それを日常生活に取り入れることは、現代社会を生き抜くための鍵となるでしょう。

この記事を書いたひと

有限会社エムズシステム 代表取締役 三浦 光仁

「音と睡眠」に関する第一人者。
音の不思議さ、音楽の凄さに身も心もやられ、人生の半生を捧げる。
あるエネルギーの振動(周波数帯域)により、人体が受け止める感覚センサーが異なると知り、驚愕。波長、周波数、共鳴、共振、という科学に足を踏み入れ、量子論的な世界を毎日楽しく生きる、有限会社エムズシステムの代表取締役、三浦光仁(みうらてるひと)。