「よい睡眠」の証拠は「気持ちのよい目覚め」

音と睡眠

朝の静けさにひらく、五感という窓「音」が導く、新しい1日の始まりに寄せて。

「よい睡眠」の証拠は「気持ちのよい目覚め」でしか味わえません。
朝、まだ空気が澄みきっていて、街が本格的に目覚める前の静けさの中。
私たちの身体もまた、深い眠りの余韻を残しながら、ゆっくりと再起動をはじめます。

そのプロセスは、まるで世界とつながる「五感の窓」がひとつずつ、やさしく開かれていくようです。
中でも、「音」は、最も静かに、そして最も確かに、その扉をノックしてくれる存在かもしれません。

私たちは目覚まし時計の「音」で目覚めるように思いがちですが、本当の意味で私たちの心と身体が起きていくプロセスは、もっと繊細で、やわらかなものです。

たとえば、遠くの電車の音。
朝の静かな街を滑るように走るその音に、耳がふとひらく瞬間。
あるいは、窓の外で鳴く鳥の声。
それは、目覚ましのように起こす音ではなく、「意識に寄り添ってくる音」です。
そうした音たちが、少しずつ聴覚を目覚めさせ、そして心の輪郭を世界へと戻していきます。

音は情報ではなく、空気そのものになることがあります。
たとえば、誰もいない朝のリビングで、何気なく小さな音楽を流したとき。
そこにあるのは、「音楽」というよりも、「空間が呼吸をはじめたような感覚」。
音が満ちることで、空間に透明感が生まれ、光や風の流れまでもが、より澄んで感じられるようになるのです。

それは、「音が聴こえる」というより、「音が在る」。
五感が一斉に開きはじめ、世界と自分の境界線がやさしくつながっていく、そんな感覚です。

音が刺激になってしまうと、せっかくの静けさを打ち消してしまいます。
だからこそ朝の音は、一方向からの音ではなく、空間全体をやさしく包み込むような音が理想です。
包まれるような音は、聴覚に対して「警戒」ではなく「信頼」をもたらします。
聴覚がリラックスすれば、自律神経のバランスも整い、呼吸が深まり、穏やかな覚醒が促されていく。

朝という時間において、音は“目覚まし”ではなく、“環境そのもの”として存在するべきなのです。
「よく眠れたかどうか」は、夜にわかるものではありません。
むしろ、その証拠は「朝、どれだけ気持ちよく目覚められたか」にすべてあらわれます。

夜にほどいた感覚が、朝にやさしくひらかれていく。
その一連のプロセスを支える「音環境」の在り方が、私たちの1日の質を決定づけていると言っても過言ではありません。

眠りに「ほどく音」、
目覚めに「ひらく音」。

「音と睡眠研究所」は、1日の両端にあるこの2つの感覚の時間に、そっと寄り添う「音」のあり方を、これからも探求していきます。

この記事を書いたひと

有限会社エムズシステム 代表取締役 三浦 光仁

「音と睡眠」に関する第一人者。
音の不思議さ、音楽の凄さに身も心もやられ、人生の半生を捧げる。
あるエネルギーの振動(周波数帯域)により、人体が受け止める感覚センサーが異なると知り、驚愕。波長、周波数、共鳴、共振、という科学に足を踏み入れ、量子論的な世界を毎日楽しく生きる、有限会社エムズシステムの代表取締役、三浦光仁(みうらてるひと)。